目的地に向かう。ただそれだけのことが、予想外に楽しい。それが、TTの持つ魅力だった。
まるでコクピットのような運転席に座ると、スポーティーな視界が開き、これからの走りを期待させてくれる。センターコンソールは運転席に向けられ、運転する前から、クルマとの一体感を高めてくれる。走り出せば、さらに、クルマと一体になったかのような安定したバランスのボディと、シフトチェンジをまったく感じさせないSトロニック(旧DSG)がドライブをサポートする。0.2秒のシフトチェンジとカタログには記されているが、実際には全くなにも感じない。コンソールに表示されるシフト表示がなければ、シフトチェンジのことなど忘れてしまうほどだ。これだけで十分に心地いいのだが、TTはさらにその先を用意してくれていた。
アクセルを踏む。その行為がTTを楽しむコツなのだ。当たり前のことだが、それが本当にここまで楽しいクルマはそうはない。高速を走ると、まるで自分が走っているかのような錯覚に陥る。それは、ターボによる加速と、計算され軽量化されたボディがもたらす安定感によるものだろう。押し出されるでもなく、引っ張られるでもなく、アクセルを踏む量をダイレクトに反映して加速させてくれる。運転することの気持ちよさ。クルマ本来が持つ楽しみがここに詰まっている。
「白川郷」へ向かうには、東海北陸自動車道荘川I.C.を降りて、しばらく国道156号線を走らなければならない。この道は険しい山を切り崩したような、曲がりくねったワインディングロードになっており、ここでも、TTの安定性が遺憾なく発揮されていた。ステアリングの操作がそのままタイトに車体に伝わり、曲がりくねったそのラインを自分の足で走るかのように、正確にトレースできる。高速走行と、ワインディングロード。クルマの性能を知るためには都合の良いコースを色々と走ったがそれでも、もっと走っていたい。それが正直な感想だ。とにかくどんな道を走っても気持ちが良い。走りたいが為に目的地へ行きたくなる。TTとはそんなクルマだ。「白川郷」に着く頃には、私はすっかりTTに魅了されていた。 |