角田光代・インタビュー 人が好きだから、さまざまなテーマ&ジャンルでリアルな人間関係を描いていきたい!

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人が好きだから、さまざまなテーマ&ジャンルでリアルな人間関係を描いていきたい! 人が好きだから、さまざまなテーマ&ジャンルでリアルな人間関係を描いていきたい!
2005年の直木賞受賞作『対岸の彼女』がドラマ化するなど、今注目の女流作家の一人、角田光代さん。1月末に上梓した『おやすみ、こわい夢を見ないように』(新潮社)についてや、小学校からの夢だった“小説家”という職業に就く秘訣(?)をお聞きしました。
角田光代 角田光代

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、90年『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、03年『空中庭園』で婦人公論文芸賞等を経て、05年『対岸の彼女』で直木賞受賞。『対岸の彼女』は夏川結衣、財前直見主演でドラマ化(WOWOW)を果たした。
『おやすみ、こわい夢を見ないように』 『おやすみ、こわい夢を見ないように』

怒り、恨み、憎しみ――ほんの些細なことで芽生えてしまう心の闇を描いた、直木賞作家の意欲作。表題作あわせて7編を収録。
角田光代――1月末に上梓した『おやすみ、こわい夢を見ないように』のテーマを教えてください。
最初に連作のお話をいただいて、テーマを決めることになったのですが、今回は「悪意」を描いてみようかな、と。「悪意」といっても大きな事件を引き起こすようなものではなく、日常の中で、普通の人が心に生む、というよりも生んでしまう「悪意」や「憎しみ」をテーマにしました。

――随分、ネガティブなテーマのような気がしますが……。
もともと気になっていたテーマなんですね。昔から小説のネタとは関係なく、殺人や傷害といった事件がある度に、行動を起こしてしまう人と、起こさず心の中で折り合いをつける人にどういう差があるのだろうか、と考えていました。その事件が身近であればあるほど心に引っかかっていました。加害者の行動を起こした後の気持ちは、起こす前のそれと関係があるのだろうか。

事件が起きてしまうと、「あの人は特殊だったんだ」「育った環境が一般的ではない」と、“加害者は普通ではなかった”という結論に落ち着く。でも、そうなのだろうか。我々も人を憎むことはあるでしょう? 憎む心と、その憎しみを行動に移してしまう心の間に何があるのか。そこを知りたかったんです。小説にしたら理解できるのではないか。そう考えてこのテーマに挑戦しました。

――具体的にはどういった「悪意」が登場するのでしょうか?
7編を収録している本書には、新婚夫婦、高校生カップル、別れたばかりのカップルなどといった7つの人間関係が描かれています。例えば新婚の夫婦の悩みごとは、子供を作る作らないといった生産的な悩みではなく、食事時の会話に出てきた、映画の出演者の正誤性といった程度のもの。そんな小さなことでも当事者には重大なことですし、つもりつもれば「悪意」が「殺意」に変わるかもしれない。

――ということは、事件を起こしてしまう心が理解できたのでしょうか?
いえ、わかりません。やっぱりアクションを起こしてしまう人の気持ちはわからなかったですね。だから、私の中では、人に悪意を持ったり憎むことと、その思いを行動に移してしまうことの間は、同じようでものすごく離れているものだという結論になりました。今後、事件を起こしてしまった側の気持ちを書くという機会があるかもしれません。その場合、本書とは地続きではない。まったく違う視点から書かなくてはならないですね。

角田光代――地続きといえば、最後に収録されている『私たちの逃亡』は、直木賞を受賞された『対岸の彼女』の2人を彷彿させますね。
私、本は何でも読むほうなんですが、トリックを見破るスタイルをとる本格ミステリーというジャンルは苦手なんですね。だけど、被害者、加害者、事件に関わる人物の心理を緻密に描く宮部みゆきさんや桐野夏生さんといったミステリー作家の作品は大好きです。結局、ジャンルはどうあれ、人間が好きなんです。よくも悪くも人間関係を描いていきたい。

――先生の作品の根底には、テーマ、ジャンルは違えど、深い人間関係が流れていますね。その点が先生の作品の色を作っているような気がします。
自分が小説を書く場合でも、一つ一つの事象を自分に引き付けてしまう。例えば女2人が喧嘩をするシーンを描くなら、自分が喧嘩した場合を考え、可能性がある行動なら文章にできる。でも、私の中でありえないことは書けない。だから、作品はそれぞれ別のテーマを受けて世に出ていますが、“私”が流れているのでしょうね。本書でもそう。7人の主人公は、「悪意」は持っても結局人を殺さない。これは私の解決策です。みんな、「悪意」を持ちつつ誰も殺さず、「悪意」と折り合いをつけて生きているのが現実。そのリアルさをカタチにしました。今後は、書いたことのないジャンル、例えばホラーなどに挑戦してみたいですね。もちろん、人間関係から発展させたいです。

――小説家というお仕事についてお聞きしたいと思います。小さい頃から小説家を目指されていたそうですが……。
ええ。小学校1年生の頃から、ずっと思っていました。読書が好きで本がない世界はありえなかった。そんな環境の中、授業中に先生から「将来なりたいものを書きなさい」といわれ、子供ですから本を作る人というのは小説家しかない、と思ったんですね。また褒められたために作文も好きになって。読書と作文が好きでそればかり勉強しているから、当然国語の成績はよくなります。でも、ほかはめちゃめちゃ(笑)。できないから興味を持てない。余計に国語にのめり込んじゃった(笑)。

角田光代――小学生のときに願ったことを思い続けることがすごいと思うのですが……。
それは違いますよ。私にはそれしかなかったんです。大学では創作科を専攻したんですね。小説の書き方を学んだのですが、ここで初めて作文ではなく小説を書きました。これが教授に褒められたんですね。(鼻先にあてた右手を前方に伸ばして)もう、鼻がこ〜んなになっちゃった(笑)。うれしくてうれしくて、小説家しか考えられなかった。数学が得意だったらほかの人生があったかも。それともスポーツが得意だったら、オリンピック選手を目指していたかも(笑)。でも私には小説しかなかったんです。

――やりたいことを見つけたい!とがんばっているVeeスクールのユーザーにアドバイスをいただけますか?
やりたいことが見つからないという方は、きっと器用なんです。何でもできるんですよ。そういう方は何でもできるから、これだ!というものを決められない。もっと他にもできるはず、上にいけるはず、とプラス思考なのではないかしら? でも私は器用ではなかった。みなさんから、「なりたいものになれてすごいね」と評価してくれるのですが、そうではない。できないものを引いていった結果、結局小説が残った。やりがい、生き甲斐は、寝なくても食事をしなくても苦にならずにできるというもの。そして、それは引き算しないと見つからないかもしれません。

何でもできる人は、無理にやりがい、生き甲斐を見つけなくてもいいのでは? 今の世の中、「個性を伸ばせ」といわれ続けているせいか、仕事、やりがい、生き甲斐、趣味、これらをすべて同じにしてしまうでしょ? 別に一緒にしなくてもいいと思います。仕事は仕事、生き甲斐は生き甲斐、趣味は趣味。ばらばらのほうが楽しみがたくさんになりますよ。えっ、私の趣味ですか? 旅行です。でも、最近は忙しくて残念ながら旅に出られませんね。今年は、以前一度だけ経験のある“ハワイのホテルでカンヅメ”なんてしてみたいですね(笑)。

――“角田流ホラー”を読める日を楽しみにしています。ありがとうございました。
撮影/小田原リエ
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