岩崎恭子・インタビュー 迷っても悩んでもいい。いろいろ経験してみる中で、「これ!」と思えるものに出会えれば

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迷っても悩んでもいい。いろいろ経験してみる中で、「これ!」と思えるものに出会えれば 迷っても悩んでもいい。いろいろ経験してみる中で、「これ!」と思えるものに出会えれば
岩崎恭子さんが金メダルをとった瞬間の映像は、今なお、私たちの記憶に鮮明に刻まれています。当時14歳だった岩崎さんも28歳。5歳から始めた水泳を引退後も、仕事として水泳に携わる岩崎さんに、なりたい仕事につくために必要なことを伺いました。
岩崎恭子
いわさききょうこ
1978年静岡県生まれ。1992年バルセロナオリンピック女子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得。1996年アトランタオリンピックと2大会連続の出場を果たす。現在は日本オリンピック委員会事業・広報委員、日本水泳連盟競泳委員、スポーツコメンテイターとして活躍。
http://www.aim-g.co.jp/iwasakikyoko/
岩崎恭子
岩崎恭子
岩崎恭子
岩崎恭子
――バルセロナオリンピック 女子200m平泳ぎで、14歳、史上最年少での金メダルという快挙を成し遂げました。今、当時を振り返ってどう感じますか?
あのときはオリンピックに出ることを目指していたのではなく、ただ水泳が好きで、「速くなりたい、もっと上手になりたい」と純粋に思って泳いでいて、その流れでとれた金メダルだったんです。オリンピックの重みとかプレッシャーがわからないまま出たことが、14歳の私にとってはよかったのでしょう。もし最初のオリンピックが4年後の18歳だったら、いろいろ考えてしまって、きっとメダルは取れなかったと思うから。実際に次のアトランタオリンピックに出たときにはすごく緊張したし、冷静ではいられなかったんです。年を重ねるごとに、オリンピック年がくるたびに、今の選手たちの活躍に感動したり当時の自分を思い出して、目指してメダルを取ることの難しさを感じるようになっています。

――もちろん、岩崎さんの努力があって取れた金メダルですよね。
オリンピック年の4月の選考会で選ばれて、そのあと記録が伸びていていたし、練習も最初はこなすだけでたいへんだったけれど、徐々に練習内容を理解しながら泳げるようにはなっていたんです。だからオリンピックで自己ベストは出せると思っていましたが、それ以上にいいタイムが出た。自分でも驚きましたよ。

――史上最年少の金メダリストで、一躍、時の人となって。金メダルをきっかけに、水泳に対する思いは変わりましたか。
私が何も考えずに言ったことが大きく取り上げられてしまい、それこそ人生が変わったようになってしまったんです。両親や学校の先生、スイミングの先生は必死で守ってくれていたけれど、それでも「何でこんなに騒がれちゃうんだろう」、「みんなに迷惑をかけて、私が発言したことがいけなかったんだ」って、まわりを気にするようになってしまった。それまでは自分のことだけを考えて泳いでいたのに、余計な考えで頭がいっぱいになって、記録がぜんぜん伸びなくなってしまって……。水泳も以前みたいに好きではなくなっていたし、「私は何をやっているんだろう」って、だらだらと練習をこなす時期が2年間くらい続いて。バルセロナの2年後にはとうとう、代表から外されてしまいました。

――金メダルまでとったのに、ショックですね。
それはもう! でも、不思議とやめようと思わずに、ジュニアの遠征に行ったんですね。普通なら、一度日本代表に選ばれた選手がまたジュニアに戻るなんて屈辱的なことなんです。でも、16歳で改めてジュニアの遠征に参加をして同じ場所に戻ってみたら、ここ何年も感じていなかった「速くなりたい、上手に泳ぎたい」っていう思いがふつふつと沸いてきたんです。この遠征では、私と一緒にバルセロナオリンピックに出てやっぱりジュニアに戻っている選手も参加をしていて、彼女は私と同じ境遇のはずなのに、遠征中にも日本記録を出して泳いでいたし。そんな彼女を見ていたら、私もまわりのことなんて気にせずに、ただ純粋に水泳が好き、早くなりたいって気持ちで泳いでいればいいんだって、やっと割り切れたんです。

――新たな思いが沸きあがって、どう変わりましたか?
無心で泳げるようになって、記録も徐々によくなっていったんです。それで、「オリンピックに出る」を次の目標にして泳ぐようになったんです。けれど、目標は、高ければいいってものでもないことを、このあと知るんです。

――何があったのですか?
記録が伸びてきたといっても、実はバルセロナオリンピックの記録が自己ベストで、それ以上のタイムでは泳げていなかったんです。試合のたびに、目標タイムとラップタイムをコーチに提出するのですが、自己ベストを上回るように書くのが当たり前だと思って出していたら、アトランタの前年に指導をしてくださっていた先生が、「気持ちはわかるけれど、今の自分でできることをやっていったほうがいい」とアドバイスをしてくれたんです。それで目が覚めました。無理な目標を立てても仕方がない、今の自分を冷静に見て目標を定めて、体調管理もしっかりしようと思えるようになって、そうしたらまた徐々に記録が上がって、目標にしていたアトランタオリンピックにも出場できたんです。
けれどオリンピックが終わって大学生になったとき、また4年間このままを続けられるかというと精神的にもきつく感じて、20歳で競技人生には区切りをつけました。

――引退を決めた時期、その後の進路として、水泳以外の選択肢はあったのですか?
大学生になったころから、「プール開きにゲストで来て、ちょっと教えてもらえますか?」といった依頼が来るようになっていたんです。私、5歳から水泳をやっていて、泳げて当然と思っていましたから、最初は何で泳げないのか、そっちほうが不思議なくらいで(笑)。教えるのは泳ぐより難しい、たいへんなことだって思いつつも、泳げるようになって喜んでもらえるとすごくうれしかったんです。自分が次に教えるのはこうしたらいいんじゃないかとか、できなかったことを次は上手にできるようになろう、と前向きに考えている自分がいたんです。それで、競技生活は区切りをつけても、私が水泳でできることはまだまだあるんだって思って。水泳をやめる必要がなかったんです。
――やっぱり水泳とは相思相愛なんですね。好きなことを仕事にできた今の楽しさ、そして難しさがあれば教えてください。
北島康介というスター選手が出て、水泳には興味のなかった人まで水泳中継を見るようになって、今、水泳界はすごく盛り上がっているんです。それから、昔は「体を冷やす」なんて言われていたけれど、今は体に負担の少ないスポーツとしてリハビリ目的で水泳が取り入れられているんですよ。いくつになっても始められるスポーツということも広まってきたし。こんなタイミングで水泳に携われて、自分の経験を元に水泳のすばらしさを伝えていけるなんて、私は本当に恵まれていますよね。
けれどその分、より多くの知識を持たなければならなりません。代表選手の練習もよく見に行きますし、コーチの指導を見せてもらうって、その中で、私が伝えられることをいつも探しています。『スイミングマガジン』も現役時代は自分や仲間が出ている部分しか読まなかったけれど、今の仕事を始めてきちんと読んでみたら、実は科学的なこともたくさん書かれているんですね(笑)。読んで「そっか、こういう理論で進んでいたのね」って思ったり(笑)。私が知らない水泳はまだまだあるって、発見の毎日です。今はビデオを使った練習もするから、私たちの時代との違いを吸収しながら、水泳の「今」を伝えていきたいですね。

――自分の進路を決めかねている人、やりたいことが見つからない人もいます。そういう人たちへメッセージを。
私だって、今も悩みや迷いはあります。水泳にずっと携わりたいと思いながら、時々刺激もほしくなって、ちょっとほかに目が向いたり(笑)。でも、常に動いていたいんです。安易に踏み出してしまうと空回りするってことも知っているから、少しだけ立ち止まって、それから動く。スローだけれど、それでいいと思うんです。今、20歳で引退したときのことを思うと、あの時、もっと別の練習法や精神面の強化の方法とか、何かやり方があったんじゃないかと思います。けれど、それもひとつの経験だし、あの経験があったから今がある。いろんなものを見て、いろんな経験をして、その中から「これだ!」って思えるものを見つけられれば。自分さえ動いていれば、必ず何かは見つかります。焦ることなんてないんです。
撮影/小田原リエ 取材・文/原沢リヱ
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